GA4:「ランディングページ別セッション数」と「閲覧開始数」は一致する?
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GA4:「ランディングページ別セッション数」と「閲覧開始数」は一致する?

    はじめに:
    Google Analytics 4 (GA4) では、サイトへの流入状況を分析する際に「ランディングページ別のセッション数」「閲覧開始数(Entrances)」という指標を使って、どのページからユーザーがサイト訪問を開始したかを見ることができます。一般的にはランディングページのセッション数 = そのページがセッションの開始ページになった回数であり、これは概ね閲覧開始数(最初に閲覧されたページの回数)と同じ意味だと理解されています。しかし、この2つの指標は本当に常に一致するのでしょうか? GA4の計測ロジックやデータ処理の仕組みを踏まえ、詳細に確認してみます。

    まず、GA4におけるセッション数と閲覧開始数、そしてランディングページの定義について整理します。

    GA4では従来のUA(Universal Analytics)と異なり、すべての計測がイベントベースになっています。セッション開始も例外ではなく、新しいセッションが始まると自動的にsession_startイベントが発生し、以降そのユーザーのイベントには同じセッションIDが付与されます​。セッション数は基本的にこのsession_startイベントの発生回数としてカウントされます。

    新規セッションがトリガーされる主な条件は次のとおりです:

    • 30分間の非アクティブ(無操作): 最後のイベントから30分以上経過するとセッションがタイムアウトし、ユーザーが再度操作した時点で新しいセッションが開始します​。この30分という閾値はGA4のデフォルト値で、必要に応じて最大7時間55分まで変更可能です。

    • 初回アクセス: ユーザーがサイトやアプリに初めて(または前回のセッション終了後に)アクセスした際には当然新しいセッションが始まります。

    • 日付の切り替わり: UAでは日付が午前0時を過ぎると自動的にセッションが切断されましたが、GA4では日付変更(深夜0時)ではセッションは切れません。そのため、23:55に訪問したユーザーが日をまたいで滞在し続けても、GA4上は1つのセッションとして継続します​

    • 参照元(キャンペーン)の変化: UAでは流入元のパラメータが変わると新しいセッションが開始されていましたが、GA4ではトラフィックソースやキャンペーンが途中で変わってもセッションを切り替えません。例えば、あるユーザーが一度サイトに流入した後、別のキャンペーン経由で再訪問しても、30分以内であれば同一セッションとして扱われます。

    まとめると、GA4におけるセッションは「一定時間内のユーザー行動のまとまり」であり、30分の非活動以外では原則切れないと考えて良いでしょう(※特殊な設定や手動計測を除く)​。

    閲覧開始数(Entrances)は、その名のとおりユーザーがサイト訪問時に最初に閲覧したページの回数を表す指標です​。具体的には、各セッションで最初に発生したページビュー(page_view)イベントを1回と数え、それを集計したものが「閲覧開始数」となります​。言い換えれば、GA4ではセッションの最初のpage_viewイベントにentrancesというフラグ(値が1)が付き、そのフラグの合計が閲覧開始数になる仕組みです​。

    ポイントを整理すると:

    • 1セッションにつき最大1つの閲覧開始がカウントされます。セッション開始直後の最初のページビューだけが「閲覧開始数」として計上され、それ以降同じセッション内でどれだけページ遷移しても新たな閲覧開始数は発生しません​。

    • GA4ではWebサイトのページ閲覧だけでなく、アプリ画面の閲覧(screen_viewイベント)も計測できますが、最初の画面表示も同様に閲覧開始数にカウントされます(ページビューとスクリーンビューの両方が対象)​。したがって、サイトやアプリ内で「最初に表示されたコンテンツ」を1セッションにつき1回記録していると考えてください。

    • Entrances指標はGA4の探索レポートなどで利用可能です。UAの「Entrances(訪問数)」とほぼ同等の概念ですが、GA4ではイベントデータに基づいて算出されます。

    ランディングページとは、「ユーザーがサイト訪問時に最初に開いたページ」のことです​。GA4においてランディングページはディメンションとして扱われており、各セッションごとにその値が設定されます​。具体的には「そのセッションで最初に閲覧されたページのページパスとクエリ文字列」がランディングページの値として記録されます​。

    このディメンションの重要な点はスコープが「セッションスコープ」であることです​。つまり、ランディングページはセッション単位で一意に決まり、そのセッション中の全てのイベントは「○○というランディングページで始まったセッションの一部」という情報を持っています。GA4の標準レポートにも「ランディングページ」レポートがあり、各ランディングページごとにセッション数などの指標を確認できます。

    • 補足: 閲覧開始数とランディングページの関係についてよく聞かれるのが、「ランディングページ」というのはディメンション(ページの属性)であり、「閲覧開始数」は指標(数値データ)である点です​。意味合いはほとんど同じですが、前者はどのページかを示す属性、後者はその回数を示す指標となっています。

    以上をまとめると、GA4では各セッションにおいて「ランディングページ」という属性が付き、そこに対して1回の閲覧開始(entrance)が発生するよう設計されています。では、その設計通りに「ランディングページ別のセッション数」と「閲覧開始数」は同じ値になるのでしょうか?

    結論から言えば、理論上はランディングページごとのセッション数 = 閲覧開始数です。同じ概念を指しているため、基本的には一致すると考えて差し支えありません​。しかし、実際のデータを見るとごく一部で不一致が生じるケースがあります。それがどのような場合か、順に見ていきましょう。

    通常のサイト訪問であれば各セッションには必ず最初のページビューがあり(=ランディングページが存在し)、それが閲覧開始数としてカウントされます​。したがって、

    • あるページAがランディングページになったセッション数は、そのページAの閲覧開始数と基本的に等しくなります。例えば、ページAが100回ランディングページになったなら、ページAの閲覧開始数も概ね100となるはずです。

    • 全てのセッションをページ別に振り分ければ、セッション数の合計と閲覧開始数の合計も等しくなります(各セッションに1つの入口ページがあるため)。

    実際、GA4の探索レポートでディメンションに「ランディングページ」、指標に「セッション数」と「閲覧開始数」を並べて検証すると、通常は両者の値はほぼ一致します。ある検証では、「(not set)」と表示される例外値を除けば ランディングページ別のセッション数と閲覧開始数の一致率は99.7%にも達しました​。このように、大部分のセッションではセッション数と閲覧開始数が1対1の関係にあります。

    では残りの0.3%程度の不一致はどのような場合に起こるのでしょうか?主なケースをいくつか挙げます。

    ランディングページ別のセッション数と閲覧開始数がズレる典型的なパターンは、セッション数の方が閲覧開始数より大きくなる場合です。つまり「セッションは発生したが、そのセッションに対応する閲覧開始(最初のページビュー)が記録されなかった」ケースです。具体的には次のような状況が考えられます:

    • (1) セッションタイムアウト後の再開: ユーザーがページを開いたまま長時間(30分以上)放置し、その後再度そのページで何らかの操作(イベント)を行った場合です。GA4では30分経過で前のセッションが終了していますが、ページ自体は再読み込みされていないため新しいpage_viewは発生しません。しかしユーザーの操作(例えばスクロールやクリックによって発火するイベント)があればそれをきっかけに新たなセッションが開始されます。この新セッションにはランディングページが紐付かず「(not set)」となり、セッション数だけがカウントされて閲覧開始数は増えない結果になります​。要するに、「ユーザー視点では同じページを見続けているがGA4上はセッションが切り替わった」という特殊なケースです。

    • (2) 最初のページビュー以前にイベントが発生: 通常はページを読み込んだタイミングでpage_viewイベントが送信されますが、実装や計測設定によってはページビューより先に別のイベントが送信されてしまうことがあります。この場合、そのイベントが事実上セッションを開始させてしまうため、本来ランディングページとなるはずのページビューが「後から発生したイベント」扱いになります​。例えば、ページAを開く際に何らかのカスタムイベントがページビューより先に送信されてしまうと、そのイベントでセッション開始(session_start)が記録され、続いて送られたpage_viewには「既に始まっているセッション内の2番目のイベント」という扱いがなされます​。結果としてセッション自体は発生しているのに、そのページビューには閲覧開始のフラグが付かないため、セッション数 > 閲覧開始数となります。実例としてMeasureSchoolの解説でも、「タグがページビューより先に発火すると、ページ閲覧が無くてもセッションが開始されてしまう」と説明されています​。これは実装上の注意点ですが、起こりうるケースです。

    • (3) クロスドメイントラッキングの未設定: ユーザーがサイト内の別ドメインに遷移するケースでも不一致が起こり得ます。クロスドメインの計測設定が適切に行われていないと、ドメイン移動時に新しいセッションが開始されます。しかしユーザーから見ると同じ流れで移動しただけなので、場合によっては最初のドメインで既にランディングページが記録されており、2つ目のドメインでは新規の「entrance」としてカウントされないことがあります​。この結果、セッション数は2つ計上されたのに閲覧開始数は1つしか増えない、といった食い違いが生じます。もっとも、このケースでは2つ目のドメイン側では別のランディングページ(例えばそのドメインの特定ページ)がカウントされているため、一概に(not set)にはならずデータの見方が少し複雑です。

    • (4) フィルタや集計ロジックの影響: GA4のデータは生データを基にインターフェース上で集計・推計されることがあります。例えばデータフィルタや一部のセグメントを適用すると、セッションやイベントが除外されて指標の値がズレることがあります​。また、GA4ではユーザーのプライバシー保護のためにセッション数など一部の指標がモデル推計値になる場合があります(Consent Mode利用時など)。このような場合、理論上は一致しているはずの値がごくわずかに異なる可能性があります。ただし、通常の解析ではあまり問題になる差ではありません。

    以上が主な不一致パターンです。要約すると、「セッションは発生したが初回ページビューが記録されなかった」状況でセッション数が閲覧開始数を上回ることがあります。これらは全セッションの中でもごく一部(数パーセント未満)であり​、一般的なサイト分析ではほぼ無視できる程度の例外と言えるでしょう。

    ※注意: 似た話として、「ランディングページの“表示回数”とセッション数の関係」にも留意が必要です。GA4のレポート上でディメンションにランディングページ、指標に「表示回数(Views)」を設定すると、一見「各セッションでそのランディングページが表示された回数(つまり1)」が出るように思えます。しかし実際にはそのランディングページから始まったセッション内の「総ページビュー数」が集計されるため、セッション数とは大きく異なる値になります​。例えば、ページAから始まったセッションでユーザーが5ページ閲覧すれば、ランディングページ=Aに対する表示回数は5とカウントされます。ランディングページの流入分析をする際は、「表示回数」ではなく「セッション数」あるいは「閲覧開始数」を見るようにしましょう。この点を誤ると、「全サイトのページビュー総数」と「ランディングページの表示回数総数」が一致してしまい、「全ユーザーが1ページしか見ていない」ような誤解を招きます​。

    「ランディングページ別のセッション数」は、そのページが何回セッションの開始ページになったかを示し、これは実質的に閲覧開始数と一致する──この定義は概ね正しいと言えます。GA4の設計上、各セッションには必ず一つのランディングページが対応し、それを指標化したものが閲覧開始数だからです​。従って、理論的にはランディングページごとのセッション数 = 閲覧開始数となります。

    しかし、上記で見たようにいくつかの例外的なケースでは厳密に一致しないことがあります。主な例外は以下の通りです:

    • セッションタイムアウト後に同一ページで新セッションが発生した場合(ページの再読み込み無し)​

    • 計測実装上、page_viewより先にイベントが発生してセッションが開始された場合​

    • ドメイン移動など特殊なケースでセッションが分断された場合​

    • データ集計やフィルタリングの過程でのわずかなズレ(稀なケース)

    これらを除けば、ランディングページのセッション数と閲覧開始数が大きく食い違うことはありません。実運用でも、その差はごくわずかで無視できる場合がほとんどです​。したがって、定義自体は実質的に有効であり「ランディングページ別セッション数≒閲覧開始数」と考えて問題ありません。

    分析でどちらの指標を優先すべきかについては、通常は「ランディングページ」ディメンションに対する「セッション数」を見れば十分です。GA4の標準レポートでもランディングページの指標はセッション数で提供されており、それが事実上そのページの流入数(Entrances)を示しています​。特定の分析でどうしても厳密な入口ページ数を計測したい場合は「閲覧開始数」指標を使っても構いません。いずれにせよ、セッション数と閲覧開始数はほぼ同義であり、現状のGA4では好みやレポートの都合に応じて使い分けられる関係です。

    最後に、前述のとおり「表示回数」をランディングページ分析に誤用しないことは重要です​。ページのパフォーマンス評価を行う際は、そのページが何回入口になったかを見るためにセッション数(または閲覧開始数)を指標とするようにしましょう。これにより、サイトの入口ページの貢献度や集客効果を正しく把握できます​。総括すると、ランディングページ別のセッション数=そのページから始まったセッションの数であり、細かな例外を除いて閲覧開始数と一致する指標であるため、GA4での流入分析ではこのセッション数指標を信頼して活用して問題ないでしょう。今後分析する際も、例外ケースの存在を頭の片隅に置きつつ、適切な指標選択によって正確なインサイトを得られるよう心がけてください。

    最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

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