広告運用担当者向け:GA4「オーディエンス」徹底理解

    はじめに
    Googleアナリティクス4(GA4)の「オーディエンス」機能をご存知でしょうか?GA4に慣れてきた方の中には、「セグメント」は探索で使ったことがあっても、「オーディエンス」はイマイチ活用できていないという方も多いかもしれません。セグメントの便利さは理解していても、「オーディエンス」は何のためにあるのか、どう使えば良いのか疑問に感じている方もいるでしょう。本記事では、GA4のオーディエンス機能について、セグメントとの違い役割・メリットを明確に解説し、実際のGA4画面に沿ったオーディエンス作成手順、さらにECサイト・メディアサイト・BtoBサイトでの具体的な活用例、そしてGoogle広告との連携方法とターゲティング活用まで詳しく紹介します。GA4のオーディエンスを使いこなし、データ分析や広告配信に役立てたい方はぜひ参考にしてください。

    まずはGA4における「セグメント」と「オーディエンス」の違いを整理します。両者ともユーザーを特定の条件でグループ化する点では似ていますが、その用途や機能に明確な違いがあります。

    • セグメント: セグメントはGA4の探索レポートで使用する一時的なデータ抽出・分析用のフィルタです。特定の条件に合うユーザーやセッション、イベントだけを抽出してレポートを比較・分析できます。特徴として過去のデータに遡及して適用できる(レポート生成時に条件に合致する過去データを抽出)点があります。​また、セグメントはユーザー単位だけでなくセッション単位・イベント単位でも作成可能です​。たとえば「特定のページを閲覧したセッション」や「あるイベントを実行したすべてのイベント」をセグメントとして定義できます。一方でセグメントは基本的にGA4内部での分析用途に限られ、作成したセグメントをそのまま広告配信に利用する、といったことはできません。

    • オーディエンス: オーディエンスはGA4上で定義するユーザー群のリストです​。特定の行動(例:「商品ページを閲覧した」「商品を購入した」)や属性(例:「東京都在住」「男性」)に基づき条件を設定すると、それを満たしたユーザーをリアルタイムでリストに追加していきます​。セグメントとの大きな違いは、オーディエンスは作成後に条件を満たしたユーザーのみが蓄積され、過去データには遡及的に適用されないという点です​。言い換えれば、オーディエンスは設定したタイミング以降に条件を満たした新規・既存ユーザーからリストを構築する機能です。さらにオーディエンスはユーザースコープ(ユーザー単位)でしか作成できないという点も異なります​。セッション単位やイベント単位の条件でグループ化したい場合、オーディエンスでは直接は設定できず、必ずユーザー全体の条件(「〇〇したことがあるユーザー」など)になります。また、オーディエンスはGA4プロパティごとに最大100件までという上限があります(有料版のGA4 360では上限400件)​。一方セグメントは探索ごとに複数作成できますが、保存して再利用する場合はプロパティあたり比較的少数に留めるのが一般的です。

    まとめると、セグメントは分析用の一時的なデータ抽出フィルタ(過去データ含め柔軟に適用可能)であり、オーディエンスはマーケティング活用を念頭に置いたユーザーリスト(作成後に条件達成したユーザーを蓄積)と言えます。GA4ではセグメントを使って詳細分析を行い、洞察を得た上で、必要に応じてその条件をオーディエンスとして定義し直すことで、分析結果をマーケティング施策に反映できるという関係性になります。

    補足: GA4では探索レポート上で作成したセグメントからワンクリックでオーディエンスを作成する機能もあります。その際、セグメントがセッションスコープやイベントスコープで定義されていた場合でも、自動的にユーザースコープの条件に変換されてオーディエンスが作成されます。セグメントで得た分析視点を簡単にオーディエンス化できる便利な機能ですが、スコープの違いには注意が必要です。

    では、GA4のオーディエンス機能の目的や活用メリットを詳しく見ていきましょう。オーディエンスは一言でいうと「特定の条件を満たすユーザー群」を事前に定義しておくことで、分析やマーケティングに活かすための機能です。

    1. マーケティング施策への活用: オーディエンス最大の役割は、特定のユーザーグループを対象としたマーケティング施策(主にリマーケティング広告など)に活用することです。GA4でオーディエンスを定義しておけば、後述するようにGoogle広告と連携してそのユーザー群に対してピンポイントで広告配信を行うことができます。例えば「商品をカートに入れたが購入に至らなかったユーザー」や「過去に購入履歴のある既存顧客」など、条件を満たすユーザーだけに絞った広告配信が可能になります​。このようにオーディエンスを活用すれば、特定の条件を満たすユーザーグループに向けたマーケティング(リターゲティング等)を実施できるのが大きなメリットです​。

    2. 分析・レポートへの活用: オーディエンスは広告用途だけでなく、GA4内部での分析にも役立ちます。作成したオーディエンスは標準レポートの比較機能でセグメントとして利用したり、データポータル(Looker Studio)のフィルタとして使うことができます​。例えば「会員ユーザー」と「非会員ユーザー」のオーディエンスを作っておけば、標準レポート上でそれぞれのコンバージョン数や行動の違いを簡単に比較できます。また、GA4の探索(探索レポート)ではオーディエンスを条件に含めた深掘り分析も可能です。オーディエンスは事前に定義しておくことで、様々なレポートで再利用可能なセグメントのように振る舞うため、日常のアクセス解析業務において分析効率を高めることができます。​

    3. 他サービスとのデータ連携: GA4のオーディエンスはGoogle広告以外にも、他のGoogleサービスや外部ツールとの連携に強みがあります。例えばBigQueryへのエクスポートAnalytics Data API経由での抽出において、オーディエンスの条件を満たすユーザーのデータだけを扱うことができます​。これにより、社内のデータウェアハウスや他のマーケティングツールと組み合わせて高度な分析・活用が可能になります。また、前述のようにLooker Studioでオーディエンスをフィルタとして使えば、よりわかりやすいダッシュボードやレポートで関係者と共有することも容易になります。

    4. 広告タグでは難しい高度なターゲティング: GA4オーディエンスを使うことで、従来の広告プラットフォームのリターゲティングタグだけでは実現しづらい細かな条件でユーザーを定義できる点もメリットです。例えば「過去7日間に2回以上サイト訪問し、かつ直近購入履歴がないユーザー」など複数の行動条件を組み合わせたリストや、年齢・性別・地域と行動を組み合わせたターゲットリストをGA4上で作成できます​。このような広告媒体のタグでは指定できないような条件でも、GA4のオーディエンスならデータ収集に基づいて自由にセグメント化できるため、より精度の高いターゲティングが可能になります​。結果として、無駄な広告配信を減らしコンバージョン率を高める効果が期待できます。

    5. 予測オーディエンス(機械学習によるリスト): GA4ではユーザーの行動履歴データをもとに機械学習で将来の行動を予測した「予測オーディエンス」という機能も提供されています​。例えば「7日以内に購入する可能性が高いユーザー」や「28日以内に高い収益をもたらすと予測されるユーザー」などが自動的にリスト化されます​。これらはGA4が一定のデータを蓄積すると自動生成されるオーディエンスで、条件を満たせばGA4プロパティにデフォルトで登場します。予測オーディエンスを活用すれば、将来的に購入しそうな見込み顧客に対して先回りして広告でアプローチするといった高度なマーケティング施策も可能になります​。※予測オーディエンスはGA4上の分析には利用できず(探索や比較には適用不可)、主に広告配信での活用が想定されています​。

    以上のように、GA4のオーディエンス機能は分析とマーケティングを橋渡しする強力な機能です。ただし、効果的に使うためには事前に適切なオーディエンスを設計・設定しておく必要がある点には注意しましょう(セグメントと違い後から条件を変えて集計し直すことはできません)。次の章では、GA4でオーディエンスを実際に作成する手順を画面に沿って解説します。

    それではGA4におけるオーディエンスの作成方法を、画面操作の手順に沿って説明します。ここではGA4管理画面から新規にオーディエンスを作成する一般的な方法を紹介します(探索レポートのセグメントから作成する方法もありますが、基本的な流れは共通です)。

    1. GA4管理画面に移動し「オーディエンス」を選択: GA4のプロパティにログインしたら、画面左下の歯車アイコン「管理」をクリックします。管理画面のプロパティ列(中央列)に「オーディエンス」という項目があるので選択します。そして右上付近に表示される「新しいオーディエンス」ボタンをクリックしましょう​。※複数のGA4プロパティを扱っている場合は、作成対象のプロパティを正しく選択していることを確認してください​。

    2. オーディエンス作成ツールで条件を設定: 「新しいオーディエンス」をクリックすると、オーディエンス作成のポップアップ画面(オーディエンスビルダー)が開きます。最初に「カスタムオーディエンスを作成」を選択します​(※GA4側でいくつかテンプレートや推奨オーディエンスが提示される場合もありますが、ここでは一から条件を指定する方法を説明します)。次にオーディエンスの設定画面が表示されたら、上部の「無題のオーディエンス」と書かれた箇所をクリックし、オーディエンス名を入力します​。必要に応じてその下の説明欄にメモを書いておくこともできます(オーディエンスの内容がひと目でわかるようにしておくと良いでしょう)。

    3. ユーザーの包含条件(および除外条件)を設定: 続いて「次の条件に当てはまるユーザーを含める」というセクションで、このオーディエンスに含めたいユーザーの条件を定義します​。右側の「新しい条件を追加」をクリックすると、ユーザーの行動や属性に基づくフィルタを追加できます。例えば、最初から用意されているイベント「first_visit(初回訪問)」を条件に指定すれば、「初めてサイトに訪れたユーザー」のオーディエンスを作成できます​。複数の条件をAND条件(全て満たす)やOR条件(いずれかを満たす)で組み合わせることも可能です。また「除外するグループを追加」を選べば、特定の条件に該当するユーザーをオーディエンスから除外する設定も行えます​。例えば「購入完了したユーザー」を除外条件に入れておけば、「購入していないユーザーのみ」のオーディエンスになります。条件にはページのURL、イベント名、イベントパラメータ、ユーザーのデバイスや地域属性など、GA4で収集しているほぼあらゆるディメンションや指標を使えます。自社サイトで計測しているコンバージョンやカスタムイベントも条件に指定できるため、自社のKPIに沿った柔軟なリストを作成しましょう。

    4. 有効期間(メンバーシップ期間)の設定: ユーザー条件を設定したら、「有効期間」も忘れずに設定します。これはユーザーがオーディエンスにとどまる期間のことです。​デフォルトでは30日間になっていますが、最大で540日まで延長可能です​。例えば有効期間を60日に設定すると、「条件を満たした日から60日間ユーザーをオーディエンスに含め、その後自動的にリストから外す」という動きになります。一般的なサイトのリマーケティングでは30日~90日程度に設定することが多いですが、商材の購買サイクルに合わせて適切な期間を設定してください(最長540日まで設定できます)。

    5. サマリーでユーザー数をプレビュー&保存: 条件と有効期間を設定すると、画面右側に「サマリー」が表示されます。ここに直近30日間でその条件に一致するユーザー数の推定値がリアルタイムで表示されます​。条件を追加・変更すると数字もすぐ更新されるので、オーディエンスの規模感を確認しながら調整できます。設定内容に問題がなければ画面右上の「保存」ボタンをクリックしてオーディエンスを作成します。

    6. オーディエンス作成完了後の処理: 保存をクリックするとオーディエンスが作成されます。作成直後から条件を満たすユーザーが徐々にオーディエンスに登録されていきますが、ユーザーがオーディエンスに追加されるまで24~48時間ほどかかる場合があるので、即座に反映されなくても慌てずに待ちましょう​。オーディエンス一覧には作成したリストが追加され、ユーザー数も随時更新されます。また一度作成したオーディエンスの条件を後から編集することはできない点にも注意してください(名前や説明、オーディエンストリガーの設定は変更可能ですが、肝心の条件部分は修正不可です)​。もし条件を変更したい場合は、新たに別のオーディエンスを作成する必要があります。不要になったオーディエンスはアーカイブ(削除)できますが、削除すると元に戻せないので慎重に扱いましょう​。

    以上がGA4上でオーディエンスを作成する基本手順です。設定自体は比較的シンプルですが、どんな条件でオーディエンスを作るかが重要です。次の章では、ECサイト・メディアサイト・BtoBサイトそれぞれにおける具体的なオーディエンス活用例を紹介します。自社のサイトに適したオーディエンス設計のヒントにしてください。

    GA4のオーディエンス機能では、組み合わせる条件次第で様々なユーザーグループを作成できます。ここではECサイトメディアサイトBtoB(リード獲得型)サイトの3種類を想定し、それぞれで役立つオーディエンスの例を挙げます。​

    ECサイトでは購買行動に基づいたオーディエンスを作成し、リマーケティングやアップセルに活用するのが一般的です。例えば次のようなユーザーリストが考えられます。

    • カート離脱ユーザー: 「商品をショッピングカートに追加したが、最終的に購入に至らなかったユーザー」のオーディエンスです。ECサイトで最も典型的なリマーケティング対象であり、GA4ではイベントadd_to_cart(カート追加)を実行したがpurchase(購入完了)イベントが発生していないユーザー、といった条件で定義できます。このリストをGoogle広告と連携し、カートに入れた商品の広告や割引クーポンを配信することで購入を促進できます。​

    • リピーター/優良顧客: 「一定回数以上の購入履歴があるユーザー」や「累計購入金額が高額なユーザー」のオーディエンスです。​たとえば過去に3回以上購入したユーザーや、累計購入額が○円以上のユーザーをリスト化すれば、ロイヤルティの高い優良顧客層が抽出できます​。このリストに対して新商品の案内メールを送ったり、広告でメンバー限定セールを告知したりすることで、アップセルやクロスセルにつなげることができます。また逆に「一度も購入に至っていないユーザー(閲覧のみ)」のオーディエンスを作成し、広告で初回購入特典をアピールするといった活用も考えられます。

    • 購入直後のユーザー: 購入完了直後のユーザーをオーディエンス化し、一定期間広告から除外するという使い方もあります。GA4でpurchaseイベント発生ユーザーを条件に含め、有効期間を例えば30日程度に設定したリストを作っておけば、そのリストをGoogle広告で除外ターゲットとして設定することで「既に購入済みの人には広告を出さない」コントロールが可能です。これにより無駄な広告配信を避け、クレーム防止や予算節約につながります(特に単価の高い商材では効果的です)。

    メディアサイト(コンテンツサイトやブログなど)の場合、主なKPIはサイト閲覧や会員登録、コンテンツ消費量などになります。ユーザーの興味関心やエンゲージメント度合いに応じてオーディエンスを作成し、再訪促進やコンバージョン(会員登録・資料請求など)につなげる施策が考えられます。

    • ヘビーユーザー(リピーター): 「直近で訪問頻度の高いユーザー」や「ページビュー数が多いユーザー」のオーディエンスです。例えば直近30日間で5回以上サイト訪問したユーザーはコアなリピーターと言えます​。このようなヘビーユーザーには、サイト内でポップアップを出して会員登録を促したり、プッシュ通知やメールマガジンで継続的に関与してもらう施策が有効です。また、逆に最近訪問が減っているユーザー(例: 以前は頻繁に訪問していたが直近30日では1回しか訪問していないユーザー)をオーディエンス化し、サイト離脱防止のキャンペーン情報を広告配信するといった使い方もできます。

    • 特定カテゴリに関心が高いユーザー: サイト内のコンテンツ分類(カテゴリやタグ)ごとに、よく閲覧しているユーザーをオーディエンス化する方法です。例えばニュースサイトで「スポーツ」カテゴリの記事を週に複数回読むユーザー、ブログメディアで「技術系」の記事ばかり閲覧しているユーザー、など興味関心領域ごとにリストを作成します。GA4では閲覧ページのURLやページタイトルにカテゴリ名が含まれるかどうかで条件設定できます。このオーディエンスを使えば、該当カテゴリに関連するコンテンツをサイト上でレコメンド表示したり、カテゴリ別のニュースレターを配信したり、また広告でそのカテゴリーの記事更新を知らせることで再訪を促進できます。

    • 直帰ユーザー/未エンゲージユーザー: サイトに流入したもののすぐ離脱してしまったユーザーもオーディエンス化しておくと役立ちます。GA4では「1ページだけ見て離脱した」「エンゲージメント時間が短かった」などの条件で抽出可能です。直帰ユーザー向けには、リターゲティング広告で人気記事やオススメコンテンツを見せてもう一度訪問してもらう施策が考えられます。同様に、一定以上サイトを利用したエンゲージドユーザー(GA4の指標で「エンゲージメント セッション」を達成したユーザーなど)をオーディエンス化し、将来的な有料会員転換を狙って会員登録訴求の広告を出す、といったこともできます。

    BtoB企業のサイトや資料請求・問い合わせ獲得を目的としたサイトでは、コンバージョン(リード獲得)までのハードルが高いため、興味を持っていそうな見込み顧客を逃さずフォローする施策が重要です。オーディエンス機能を使って、コンバージョンに至らなかった訪問者を再アプローチしたり、逆にホットリードを抽出して重点的に分析するといった活用ができます。

    • フォーム到達済み離脱ユーザー: 「お問い合わせフォームの入力ページまでは到達したが、送信完了(コンバージョン)せずに離脱したユーザー」のオーディエンスです。​これはBtoBサイトでぜひ作成しておきたいリストの一つです。GA4でフォームページのURL閲覧を条件に含め、送信完了イベント(またはサンクスページ閲覧)を除外条件に設定すれば抽出できます。フォーム直前まで来た人は関心度が高いものの何らかの理由で踏みとどまった可能性があるため、リマーケティング広告で資料請求を促すバナーを見せたり、サイト上でチャットボットによる再フォローを試みるなどの対策につなげられます。

    • 再訪問している見込み顧客: 初回訪問後、複数回サイトを訪問しているがまだ問い合わせに至っていないユーザーをオーディエンス化する例です。例えば「過去に一度でも資料請求ページを閲覧したことがあり、直近1ヶ月で2回以上サイト訪問しているが未コンバージョン」のような条件を設定すれば、現在検討段階にいる見込み顧客のリストになります。こうしたユーザーには、ホワイトペーパーの提供や無料トライアルの案内など、有益な情報提供を伴う広告を配信することで問い合わせへの後押しが期待できます。また、営業担当者がアクセスログと照らし合わせてアプローチリストを作る際にも、GA4のオーディエンスで洗い出した再訪問ユーザーを参考情報とすることができます。

    • コンバージョン完了ユーザー: BtoBサイトでは一度問い合わせや資料請求を完了したユーザーに対して、追加のナーチャリング(育成)施策を行うケースもあります。GA4で「コンバージョン達成ユーザー(例: フォーム送信完了)」のオーディエンスを作っておけば、コンバージョン後○日以内のユーザーに限定してセールス向けのメールを送る、あるいはコンバージョン者を除外したうえで新規見込み客向け広告に注力する、といった戦略が立てやすくなります。コンバージョンユーザーの特徴を分析することで、質の高いリードの傾向をつかみ、今後の広告ターゲティング改善にも役立てられます。

    以上、各種サイトでの活用例を紹介しましたが、これらは一例に過ぎません。自社のサイト目的(ECであれば売上拡大、メディアならPVや会員増、BtoBならリード数向上など)に応じて、「その目的達成のためにフォーカスすべきユーザー層」は誰かを考え、その条件をオーディエンス化すると良いでしょう。​GA4のオーディエンス機能によってユーザーを効果的にグループ化することで、マーケティング施策の精度が格段に向上します。

    GA4で作成したオーディエンスは、Google広告(Google Ads)と連携することで広告配信のターゲティングに直接活用できます。ここではGA4オーディエンスをGoogle広告で利用するための設定手順と、そのメリットについて解説します。

    1. アカウントのリンク: まず、GA4プロパティとGoogle広告アカウントをリンク(連携)します。GA4管理画面の「プロパティ」列にある「Google広告のリンク」をクリックし、ウィザードの指示に従って連携するGoogle広告(Google Ads)のアカウントを選択・リンクします。連携にはGA4側で「編集者」以上の権限と、Google広告側で管理者権限が必要です。リンク設定の途中で「パーソナライズド広告を有効化(Enable Personalized Advertising)」というオプションがありますが、オーディエンスを広告で活用するにはこれを有効にする必要があります。これはGA4で収集したユーザーデータを広告のリマーケティング目的に利用してよいかの許可設定です。チェックを入れてリンクを完了しましょう。

    2. Googleシグナルの有効化(※必要に応じて): GA4でオーディエンスを広告活用する際は、GA4プロパティでGoogleシグナルを有効にしておくことも推奨されます。Googleシグナルを有効化すると、ユーザーのGoogleログイン情報を用いたクロスデバイス計測やリマーケティング機能が有効になります。GA4管理画面の「データ設定 > データ収集」でGoogleシグナルをオンにできます。これによりGA4オーディエンスがGoogle広告のリマーケティングリストとして正しく機能し、より多くのユーザーがマッチングされるようになります。

    3. 連携の確認: GA4とGoogle広告のリンクが完了すると、GA4で作成済みのすべてのオーディエンスが自動的にGoogle広告側に共有されます。Google広告の管理画面で「ツールと設定 > 共有ライブラリ > オーディエンス マネージャー」を開き、「セグメント」タブ(旧「リマーケティング」リスト)を見ると、GA4から連携されたオーディエンスが一覧に表示されるはずです。リスト名にはGA4プロパティ名やオーディエンス名が反映されているので確認してください。注意点として、新しくオーディエンスを作成した場合、そのリストにユーザーが1人以上含まれる状態になるまでGoogle広告側では利用できません。オーディエンス作成直後はユーザー数0のため、前述のように24~48時間ほど待ってユーザーが溜まってから広告で使い始めましょう。

    GA4のオーディエンスがGoogle広告に連携できたら、いよいよ広告配信でそのリストを活用できます。具体的には、Google広告のキャンペーンや広告グループの設定画面でオーディエンス セグメントを追加する際に、GA4由来のオーディエンスを選択すればOKです​。例えばディスプレイ広告キャンペーンであれば、「オーディエンス」ターゲティングのセクションからリストを選び、検索広告キャンペーンであれば「オーディエンス」の観察/ターゲット設定でリストを指定することができます。活用例として以下のようなシナリオが考えられます。

    • リマーケティング広告による再アプローチ: GA4で作成した各種オーディエンスに対して、ディスプレイ広告やYouTube広告などで再アプローチを行います。前述のカート離脱ユーザーのリストを使って、そのユーザーに対し商品の追跡型バナー広告(動的リマーケティング)を配信すれば購買後押しになります。またフォーム離脱ユーザーに対して、別の訴求ポイントを盛り込んだバナー広告を配信し再度フォーム誘導する、といった使い方もできます。GA4で条件を細かく設定している分、汎用的なリマーケティングより精度の高いアプローチが可能です。

    • アップセル・クロスセル: 購入完了ユーザーのオーディエンスを対象に、関連商品や上位プランへのアップグレードを促す広告を出す施策です。例えばECサイトで直近購入者に対しておすすめ商品の広告を表示したり、SaaSサイトで有料プラン利用者に上位プランの案内バナーを見せたりといった応用ができます。GA4オーディエンスで絞り込むことで、既存顧客だけに限定したキャンペーンを効率よく実施できます。

    • 除外による広告効率化: コンバージョン済みユーザーのリストや不適切ユーザーのリストを除外ターゲティングに設定することで、広告費の無駄打ちを防ぐことも重要です。GA4オーディエンスはこの除外用途にも威力を発揮します。例えば「過去に一度でも購入したことがあるユーザー」を除外すれば、新規顧客獲得キャンペーンで既存顧客に広告を配信しないようにできますし、逆に「自社サイトを全く訪れたことがないユーザー」のオーディエンスを作って除外することで、リマーケティングキャンペーンを純粋なサイト訪問者だけに限定することもできます。GA4ならではの柔軟な条件指定で精度高く除外リストを管理できる点もメリットです。

    • 予測オーディエンスを活用したターゲティング: GA4が自動生成する予測オーディエンス(例えば「7日以内に購入する可能性が高いユーザー」など)も、Google広告で活用できます​。これらは機械学習モデルによって抽出された見込み度の高いユーザー群なので、広告配信に使えば高確率で成果が見込めます。例えば「7日以内に購入する可能性が高い既存顧客」のリストに対して限定クーポンの広告を出し購買を促進したり、逆に「7日以内に離脱する可能性が高いユーザー」に対して引き留め施策の広告を出す、といった使い方が考えられます。予測オーディエンスはGA4内部の分析には利用できないものの、広告配信でその真価を発揮するでしょう​。

    このようにGA4のオーディエンス連携により、広告ターゲティングの精度と柔軟性が飛躍的に向上します。​GA4で緻密に定義したユーザーセグメントをそのまま広告に活かせるため、これまで以上にパーソナライズされたマーケティングが可能になります。特に、広告のクリックやサイト訪問といった単純な条件しか使えなかった従来のリマーケティングに比べ、GA4ではサイト内の深い行動データや属性情報まで加味した高度なオーディエンス設計ができる点が大きな強みです。​その結果、無関係なユーザーへの配信を減らし、限られた予算でより成果の出やすいユーザーに絞ってアプローチできるようになります。

    最後に、本記事の内容を簡単にまとめます。

    • GA4のオーディエンスとは何か: サイトやアプリ訪問ユーザーのうち、特定の行動・属性条件を満たすユーザーのグループです​。セグメントが分析用の一時フィルタなのに対し、オーディエンスはマーケティング活用を念頭に置いたユーザーリストとして機能します。セグメントは遡及適用可能ですがオーディエンスは作成後のデータ蓄積であり、ユーザースコープのみで条件設定されます​。

    • オーディエンスの目的・メリット: オーディエンスを使うと特定のユーザー層だけを抽出して広告配信ターゲットにできるほか、GA4レポート上で比較分析に利用したり、BigQueryやLooker Studioと連携した高度な分析にも活用できます​。また、GA4ならではの詳細な条件設定により、広告プラットフォームのタグでは捉えきれないユーザーにもリーチできるという利点があります​。さらにGA4では機械学習による予測オーディエンスも提供され、購入予測が高いユーザーなどを自動で抽出してマーケティングに活かすことも可能です。

    • オーディエンスの作成手順: GA4管理画面の「オーディエンス」から「新しいオーディエンス」を選び、カスタムオーディエンスを作成します。名前と条件(含める条件・除外条件)を設定し、有効期間を指定して保存すれば完了です​。最大540日の有効期間設定が可能で、条件に一致するユーザーが自動的にリストに追加・削除されます​。条件設定後はサマリーでユーザー数の目安を確認でき、保存後24~48時間ほどでユーザーがリストに反映されます​。作成後に条件変更はできないため、設定は慎重に行いましょう​。

    • 活用例(EC/メディア/BtoB): ECサイトではカート離脱者や優良顧客のリストを作ってリターゲティングやクロスセルに活用できます​。メディアサイトではヘビーユーザーや特定カテゴリ閲覧者を抽出して再訪促進や会員化を狙う施策が考えられます。BtoBサイトではフォーム未送信離脱者や複数回訪問している見込み顧客をリストアップし、広告や営業フォローに活かすことが重要です​。自社サイトの目的に応じて適切なオーディエンスを設計しましょう。

    • Google広告との連携と広告ターゲティング: GA4とGoogle広告をリンクすれば、GA4オーディエンスをそのまま広告のターゲティングセグメントとして使用できます。リンク設定時にはパーソナライズド広告の有効化を忘れずに。連携後、GA4の各オーディエンスはGoogle広告の「オーディエンスマネージャー」に自動連携され、ディスプレイ広告や検索広告の配信対象に設定可能です​。これにより精度の高いリマーケティング(カート放棄者への追跡広告等)や効率的な除外配信(既存顧客を除外して新規獲得に集中等)、さらに予測オーディエンスを使った先手のアプローチなどが実現できます​。GA4の詳細な条件で絞り込んだユーザー群に限定して広告配信することで、広告ROIの向上が期待できます。

    GA4のオーディエンス機能は、設定にひと手間かける必要はありますが、その分得られる効果は大きいです。セグメントで分析した知見をすぐさまオーディエンスとして実装し、広告や施策に反映することで、データに基づくPDCAサイクルを強力に回せます。ぜひGA4オーディエンスを活用して、サイト運営や広告運用の成果を高めていきましょう。


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