ECサイトのゴールデンルートを発見する方法 – Google Analytics 4とPythonを活用して(第2回)
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ECサイトのゴールデンルートを発見する方法 – Google Analytics 4とPythonを活用して(第2回)

前回からの続きです。

普段の業務をこなしながら、マーケ担当の方がデータ分析を学ぶ時間というのは雀の涙ほどしかないと思います。しかしです。もし、統計解析や機械学習が楽しくなってくれば、社内に専門家の方がいらっしゃないだけに、業務の効率化に直結すると言えるでしょう。

Rによるやさしい統計学 単行本 – 2008/1/25
山田 剛史 (著), 杉澤 武俊 (著), 村井 潤一郎 (著)

この記事では、PythonのPandasを使っており、Rは使っていないのですが、統計解析を今から学ぼうという方がおられましたら、筆者が一押しの統計本をご紹介します。一見堅苦しい雰囲気の表紙ですが、中身は実に懇切丁寧で、統計に対する苦手意識を取り除いてくれる可能性があります。

それでは、本題に入っていきましょう

Markov Chain(マルコフ連鎖)は、状態遷移を確率的にモデル化する手法であり、ユーザーのページ間遷移パターンの分析に適しています。Markov Chainを用いることで、各ページ間の遷移確率を計算し、売り上げに効果的なページ遷移ルートを特定することができます。

まず、markovclickというPythonライブラリをインストールし、使用します。このライブラリは、クリックストリームデータからMarkov Chainを構築し、遷移確率を計算する機能を提供しています。

pip install markovclick

次に、markovclickライブラリを使って、前処理済みのデータからMarkov Chainを構築し、遷移確率を計算します。

from markovclick.models import MarkovClickstream
from markovclick.utils import ModelDataFormatter

# ユーザーごとのページ遷移シーケンスを抽出
sequences = preprocessed_data.groupby('user_id')['page_path'].apply(list).tolist()

# Markov Chainを構築
mcf = MarkovClickstream(sequences)

# 遷移確率行列を取得
transition_matrix = mcf.calculate_transition_probabilities()

# 遷移確率行列を表示
print(transition_matrix)

これで、各ページ間の遷移確率が計算できました。遷移確率行列を解析することで、高い遷移確率を持つページ間のルートを特定し、それらのルートを最適化することで売り上げ向上を目指すことができます。

次のセクションでは、クラスタリングを用いて類似の遷移パターンを持つユーザーをグループ化し、各グループごとにゴールデンルートを発見する方法を説明します。

クラスタリングは、データを自然なグループに分ける手法です。このセクションでは、クラスタリングを用いて類似の遷移パターンを持つユーザーをグループ化し、各グループごとにゴールデンルートを発見する方法を説明します。

まず、遷移確率行列から特徴ベクトルを作成します。これにより、ユーザーの遷移パターンを数値データとして扱うことができます。特徴ベクトルは、遷移確率行列の各要素を1次元配列に平坦化したものです。

特徴ベクトルを作成したら、次に適切なクラスタリング手法を選択します。この例では、k-meansクラスタリングを使用します。k-meansは、データをk個のクラスタに分割することを目指すアルゴリズムで、シンプルで効果的な手法です。

まず、必要なライブラリをインポートし、k-meansのインスタンスを作成します。

from sklearn.cluster import KMeans

# クラスタ数を設定
num_clusters = 3

# k-meansのインスタンスを作成
kmeans = KMeans(n_clusters=num_clusters, random_state=0)

次に、k-meansアルゴリズムを適用して、特徴ベクトルをクラスタに分割します。

特徴ベクトルにk-meansアルゴリズムを適用してクラスタリングを実行します。

# クラスタリングを実行
kmeans.fit(feature_vectors)

# 各ユーザーにクラスタラベルを割り当て
cluster_labels = kmeans.labels_

これで、類似の遷移パターンを持つユーザーが同じクラスタに分類されました。各クラスタごとに、遷移パターンをさらに詳細に分析することで、各グループの特徴を把握し、最適なゴールデンルートを見つけることができます。

最後に、各クラスタごとに遷移パターンを分析し、ゴールデンルートを特定します。

# クラスタごとの遷移パターンを分析
for i in range(num_clusters):
    cluster_sequences = [seq for idx, seq in enumerate(sequences) if cluster_labels[idx] == i]
    cluster_mcf = MarkovClickstream(cluster_sequences)
    cluster_transition_matrix = cluster_mcf.calculate_transition_probabilities()
    
    # クラスタごとの遷移確率行列を表示
    print(f"Cluster {i+1} Transition Matrix:")
    print(cluster_transition_matrix)
    print("\n")

これで、各クラスタの遷移確率行列が得られました。遷移確率行列を解析することで、各グループのユーザーがたどる可能性の高いページ間のルートを特定し、それらのルートを最適化して売り上げを向上させることができます。また、異なるユーザーグループごとに異なるゴールデンルートを提案することで、より効果的な販売戦略を実施することが可能になります。

ゴールデンルートを特定した後、その効果を評価することが重要です。このセクションでは、パターンごとの売り上げ効果を評価する方法を説明します。

3.3.1. コンバージョン率の計算

まず、各グループのコンバージョン率を計算します。コンバージョン率は、特定のパスを辿ったユーザーが購入に至る確率を示します。これにより、ゴールデンルートが売り上げにどれだけ寄与しているかを把握することができます。

def calculate_conversion_rate(group_data, purchase_page):
    total_users = group_data['user_id'].nunique()
    total_purchases = group_data[group_data['page_path'] == purchase_page]['user_id'].nunique()
    conversion_rate = total_purchases / total_users
    return conversion_rate

purchase_page = "/purchase_complete"
for i in range(num_clusters):
    group_data = preprocessed_data[preprocessed_data['cluster_label'] == i]
    conversion_rate = calculate_conversion_rate(group_data, purchase_page)
    print(f"Conversion Rate for Cluster {i+1}: {conversion_rate:.2%}")

3.3.2. 売り上げ効果の比較

次に、各グループの売り上げ効果を比較します。売り上げ効果の指標として、平均注文金額や総売上金額などを使用することができます。各グループごとに異なるゴールデンルートを適用し、その効果を定期的にモニタリングすることで、ECサイトの売り上げ向上に効果的な戦略を策定することができます。

def calculate_group_revenue(group_data, purchase_page):
    purchase_data = group_data[group_data['page_path'] == purchase_page]
    total_revenue = purchase_data['revenue'].sum()
    return total_revenue

for i in range(num_clusters):
    group_data = preprocessed_data[preprocessed_data['cluster_label'] == i]
    group_revenue = calculate_group_revenue(group_data, purchase_page)
    print(f"Total Revenue for Cluster {i+1}: ${group_revenue:.2f}")

3.3.3. A/Bテストを活用した効果検証

最後に、実際にゴールデンルートを適用する前に、A/Bテストを実施して効果を検証することをお勧めします。A/Bテストは、ユーザーをランダムに2つのグループに分け、それぞれに異なるルートを提供し、どちらがより効果的であるかを比較する方法です。A/Bテストを実施するためには、ウェブサイト上でユーザーに提示するコンテンツやナビゲーションを変更し、それぞれのグループがゴールデンルートを辿るように促す必要があります。テスト期間が終了したら、各グループのコンバージョン率や売り上げ効果を比較して、ゴールデンルートの最適化が目標を達成するかどうかを評価します。

import pandas as pd
import numpy as np

# 仮想データのロード
ab_test_data = pd.read_csv("ab_test_data.csv")

# コンバージョン率を計算する関数
def calculate_conversion_rate(data, group_col, user_col, purchase_page):
    total_users = data[user_col].nunique()
    total_purchases = data[data['page_path'] == purchase_page][user_col].nunique()
    conversion_rate = total_purchases / total_users
    return conversion_rate

# A/Bテストの結果を評価する関数
def evaluate_ab_test_results(data, group_col, user_col, purchase_page):
    unique_groups = data[group_col].unique()
    for group in unique_groups:
        group_data = data[data[group_col] == group]
        conversion_rate = calculate_conversion_rate(group_data, group_col, user_col, purchase_page)
        print(f"Conversion Rate for {group}: {conversion_rate:.2%}")

# A/Bテストの結果を評価
group_col = "group"
user_col = "user_id"
purchase_page = "/purchase_complete"
evaluate_ab_test_results(ab_test_data, group_col, user_col, purchase_page)

このコードは、A/Bテストの結果をロードし、各グループのコンバージョン率を計算し、評価するためのものです。データは仮想データとして用意していますが、実際のデータに置き換えて利用することができます。

import pandas as pd
import seaborn as sns
import matplotlib.pyplot as plt
from scipy.stats import ttest_ind

# 仮想データのロード
ab_test_results = pd.read_csv("ab_test_results.csv")

# A/Bテストの各グループの売上データを抽出
group_a_data = ab_test_results[ab_test_results['group'] == 'A']['revenue']
group_b_data = ab_test_results[ab_test_results['group'] == 'B']['revenue']

# 売上データの分布をプロット
sns.histplot(group_a_data, kde=True, label="Group A")
sns.histplot(group_b_data, kde=True, color='r', label="Group B")
plt.legend()
plt.xlabel("Revenue")
plt.ylabel("Frequency")
plt.title("Revenue Distribution for A/B Test Groups")
plt.show()

# t検定を実行して、グループ間の売上の違いを検証
t_stat, p_value = ttest_ind(group_a_data, group_b_data)
print(f"t-statistic: {t_stat}, p-value: {p_value}")

# 有意水準を設定(例: 0.05)
alpha = 0.05

# p値をもとに結果を解釈
if p_value < alpha:
    print("The difference between Group A and Group B is statistically significant.")
else:
    print("The difference between Group A and Group B is not statistically significant.")

上記の例では、A/Bテストの結果を分析するために、t検定(帰無仮説が正しいと仮定した場合に、統計量がt分布に従うことを利用する統計学的検定法の総称)を用いて2つのグループ間の売上の違いを検証しています。最適化の過程で、このような統計的検定を用いて、実装した変更が売上に対して有意な影響を与えているかを確認することができます。ただし、これは一例であり、具体的な最適化手法はケースバイケースで異なります。

A/Bテストの結果をもとに、ゴールデンルートの最適化を行います。具体的には、以下のような手法を用いて最適化を進めることができます。

3.3.4.1. 改善点の特定

まず、A/Bテストの結果から、効果的でなかったルートやページの改善点を特定します。例えば、ページのデザインやコンテンツ、ナビゲーションメニューの配置など、ユーザー体験に影響を与える要素を見直すことができます。

3.3.4.2. イテレーション

改善点を特定したら、それらを修正し、再度A/Bテストを実施します。このプロセスを繰り返すことで、より効果的なゴールデンルートを見つけることができます。

3.3.4.3. セグメントごとの最適化

A/Bテストの結果やクラスタリングに基づいて、異なるユーザーセグメントに対して最適化を行うことができます。例えば、異なるデバイスや地域、年齢層などの属性に基づいて、ペルソナに合わせた最適化を実施することができます。

3.3.4.4. ゴールデンルートの効果を維持する

最適化を進めた後、定期的にゴールデンルートの効果をモニタリングし、変化に対応することが重要です。市場環境や競合他社の戦略、ユーザーのニーズの変化など、外部要因によってゴールデンルートの効果が低下する可能性があるため、状況を見極めながらアップデートを行いましょう。

これらの手法を活用して、ゴールデンルートを最適化し、ECサイトの売り上げを向上させることができます。最適化を継続的に行い、ユーザーのニーズに合わせた戦略を実施することで、長期的な成功につなげることができるでしょう。

前章では、ユーザーのページ間遷移パターンの分析方法を紹介しました。本章では、それらのパターンから売り上げ効果が高いゴールデンルートを特定する方法を解説します。

まず、各遷移パターンの売り上げ効果を計算する必要があります。具体的には、各パターンのユーザーが購入に至った場合の平均売上額やコンバージョン率を算出します。以下は、遷移パターンごとの売り上げ効果を計算するPythonのコード例です。

import pandas as pd

# 遷移パターンと売上データの読み込み
transition_patterns = pd.read_csv('transition_patterns.csv')
sales_data = pd.read_csv('sales_data.csv')

# 遷移パターンごとの売り上げ効果を計算
pattern_sales = transition_patterns.merge(sales_data, on='user_id', how='left')
pattern_sales['revenue'] = pattern_sales['revenue'].fillna(0)

pattern_effect = pattern_sales.groupby('pattern_id').agg({'revenue': 'sum', 'user_id': 'count'})
pattern_effect['avg_revenue'] = pattern_effect['revenue'] / pattern_effect['user_id']
pattern_effect['conversion_rate'] = pattern_effect['revenue'].gt(0).sum() / pattern_effect['user_id'].sum()

売り上げ効果が高い遷移パターンを特定するため、平均売上額やコンバージョン率の上位パターンを抽出します。ここでは、平均売上額が上位10%に入る遷移パターンをゴールデンルートとして特定します。

top_10_percent = int(0.1 * len(pattern_effect))
golden_routes = pattern_effect.nlargest(top_10_percent, 'avg_revenue')

これでゴールデンルートが特定できました。次に、ゴールデンルートの最適化と改善提案について解説します。

ゴールデンルートを特定した後、それを最適化し、ウェブサイトのユーザビリティやデザインを改善する提案を行います。以下は、改善提案を行うための一般的なステップです。

  1. ゴールデンルートのページ遷移を詳細に分析し、ユーザーがどのような行動を取っているかを理解する。

  2. ページ遷移の改善点や課題を特定する。

  3. デザインやコンテンツの改善案を検討し、それを実装する。

  4. 改善後の遷移パターンや売り上げ効果を再評価し、さらなる最適化の余地があるかどうかを検討する。

具体的な改善提案例としては、以下のようなものが考えられます。

  • ゴールデンルートに含まれるページを目立つようにデザインし、より多くのユーザーがそのルートをたどるように促す。

  • 類似の商品や関連するコンテンツへのリンクを強化し、ユーザーが自然にゴールデンルートへ誘導されるようにする。

  • ゴールデンルートにおけるコンバージョンの障壁を取り除くために、フォームの簡素化やチェックアウトプロセスの最適化を行う。

最後に、改善提案の効果を検証するためにA/Bテストを実施します。A/Bテストでは、改善前後のバージョンを同時に公開し、どちらのバージョンがより高いコンバージョン率や売り上げ

を達成するかを検証します。A/Bテストの結果に基づいて、改善案を本番環境に適用するかどうかを決定します。

以下は、Pythonを使用してA/Bテストの結果を分析するコード例です。

import pandas as pd
import scipy.stats as stats

# A/Bテストデータの読み込み
ab_test_data = pd.read_csv('ab_test_data.csv')

# コンバージョン数をカウント
conversion_count = ab_test_data.groupby('variant')['conversion'].sum()

# 各バリアントのユーザー数をカウント
user_count = ab_test_data['variant'].value_counts()

# 二項検定を実施
test_result = stats.binom_test(conversion_count, user_count)

print(test_result)

このコードでは、A/Bテストのデータを読み込んで、各バリアントのコンバージョン数とユーザー数をカウントします。その後、二項検定を実施して、統計的に有意な差があるかどうかを判断します。もし有意な差が見られた場合、改善提案が効果的であると言えます。その結果に基づいて、改善案を本番環境に適用するかどうかを決定しましょう。

A/Bテストを適切に実施し、分析することで、ウェブサイトの改善が客観的な指標に基づいて行われるようになります。これにより、ゴールデンルートの効果を最大限に引き出すことが可能になります。

本章では、ゴールデンルートの特定、最適化、および改善提案について解説しました。次章では、Pythonを活用してこれらのプロセスを自動化する方法について説明します。

(次回に続きます。)

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